マビノギ的な内容の小説を書いてるかもよ。 マビノギ知らない人も楽しめるように書きたいのかもよ。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

stage2-17 Lesson1だぜ

「もっかい今のやるよ、今度は躱せると思う」
レマサがオオガキに言う。再び数メートル離れ、先ほどと同じように一歩を踏み出す。
やはり先と変わらず、その一歩は数メートルの距離を詰めてくる異質なもので、
「今度は見えるぜ…」
しかしオオガキも今回はそれを見極め、出された拳をよける事に成功した。
「うんうん、ちゃんと避けれたね。で、回避成功した感想はどうよ、がっきー」
「成功もなにも……全く同じ動きでくるなら避けれないワケないだろ?想定内なんだから」
「そう、その『想定』ってのが重要なんだよ。闘いに勝つには相手の動きを想定して回避する。まずこれが最重要だ。もう一階やるよ?」
再びレマサがオオガキから距離をとり構え、一歩踏み出す。
オオガキはさっきと同じ要領で躱そうと体を傾かせて、
(さっきより遠い…?)
気付いた。レマサが、拳の届かない位置に着地し、そして勢いをつけてオオガキの目の前に降り立つ。
しかしオオガキは既に、『想定した動き』に対する回避行動をとってしまった故に動けず、
トン、と胸を叩かれてしまった。
「同じ発生でも異なる動きに派生することもある、まぁ今回はちょっと意地悪だったかな?」
「ぐぬぬ…予想できない動きだ…」
「これから出来るようになるよ、あらゆるパターンを叩き込むからね。さ、厳しい修行をはじめようか」
にっこり笑って言うレマサにオオガキは冷や汗をかいたが、それを悟られないように叫ぶ。
「やぁってやるぜ…!」



「もうお前が来て一週間が経つか…どれ、そろそろ稽古をつけてくれよう」
「えっ!今までのは!?やっぱただのパシリだったの!?」
ダンバートン、ヒーラーの家に二人の声が響く。
「これまでのは修行であって稽古ではないだろう。まあ基礎体力はついたんじゃないか?」
「なんか適当な言い方だけど大丈夫なのこのひと…」
ウェリアムと、ヒーラーのマヌスの声である。
この日は患者もおらず余裕があるからなのか、マヌスが稽古をつけると言い出した。
二人は中庭に移動すると、
「で、稽古ってなにするの?組み手?」
「…今のお前と組手なんてしてもボコボコだろう…。そうだな、俺に攻撃を当ててみろ。一発でも当たればこれからの雑用はなしにしてやるぞ」
「まじでっ!」
ウェリアムが乗り気になったのを見て、マヌスは口の端を吊り上げ言う。
「ま、そう簡単にはいかんがな。いつでも来い」
言うと同時、ウェリアムが突進して来るのを見ながら、マヌスはポケットから櫛わ取り出し、
「とりゃああっ」
と言いながら、一秒前にマヌスのいたところに突っ込んで行くウェリアムの背後に回り、髪を一房手で流す。
そして、ヒーラーは言った。
「髪が若干痛んでいるぞ、トリートメントはしているか?」
「んなっ…」
「ん、どうした、攻撃を続けてくれて構わないぞ、そんな攻撃て治療中でも避けれる」
「く…絶対当ててやるんだからね!」
ウェリアムはマヌスの方に向き直り、がむしゃらに拳を振る。
そんなものが当たるはずもなく、マヌスは避けるどころか、ポケットからハンドクリームを取り出し、ウェリアムの突き出される拳に塗っている。
「んー余裕余裕、それじゃあ何年たっても当たらんぞー」

そんなこんなで茶化されながら日が暮れたが、結局攻撃が当たることはないのであった。



「よっし、これで三ページ目か」
「このペースならサンダー習得は間に合いそうね」
ダンジョンのボス部屋、スバルとマリーの声がする。
二人は新たな魔法習得のため、エリン各地にある魔道書のページを集め歩いていた。
「いや、このあとの二ページが鬼門って聞くからなあ、まあ油断しないでいこう」
二人はダンジョンから出ると、次の目的地について話し合った。
「次は…ラビダンジョンか。今日はこの辺にして飯でも食べにいこうか」
「この辺、隠れた名店とかあるかしら」
「そうだなぁ……カブ港に美味い酒場があるけど、移動を考えたらダンバートンの食堂でいいんじゃないかなぁ、だるいし」
「うー…グリニスさんの料理も美味しいからいっか…」
「っていうか何美味い料理屋探してんだ、観光か」
自分も名店を提案したくせに、スバルがマリーにツッコミを入れる。
「どうせなら楽しんだ方が得なのよ!」
一番深刻な事態のマリーに言われると、スバルも反論する気にはならず、ポジティブでいいね…と返す。
その後も他愛ない会話をしながら歩くこと数十分でダンバートンに着き、食堂で夕食を済ませたあと、ポーション類の補給にマヌス宅であるヒーラーの家へ向かう。

「おじゃましますよー」
スバルが言いながら扉を開くが、返って来る声はない。
「あれ?いつもならその辺に座ってるんだけどな」
いつもマヌスのいる場所に彼はおらず、二人は家の中をキョロキョロと見回して、中庭の見える窓の向こうにその姿を発見した。
「…あれ何?」
マリーが、スバルに聞いてみる。
中庭では、ウェリアムとマヌスが、組み手…だろうか?
ウェリアムがマヌスに殴りかかり、マヌスはそれをかわしつつウェリアムの髪や手を手入れするというわけのわからない事が起こっていた。
「ポーション代だけ置いていこうか」
「そ、そうね、邪魔しちゃ悪いしね」
二人はポーションを貰い代金を机に置いて、若干引き気味にヒーラー宅を出た。



いつも通りの距離、レマサが踏み込む。
オオガキはそれに動じず、相手の動きを見極める。
レマサはオオガキの目の前まで踏み込み、右の拳をオオガキの顔めがけて突き出す。
オオガキは首を傾かせてそれを躱し、膝を曲げて跳躍の姿勢をとる。
レマサは続いて足払いをするつもりだったが、その動きを見て手刀に切り替え、右手をオオガキの首に落とす。
が、オオガキの跳躍には間に合わずに距離を取られた。
数メートルあいた距離を、レマサは一歩の助走で跳躍した。
その高さは実にオオガキの身長近くまで飛び、両足を揃えてオオガキの顔面を蹴りに行く。
しかし、動きも大きく、速さもオオガキに見きれぬ速度ではない。
「スローな蹴りだ…その程度ッ!」
オオガキが言って、レマサの両足を挟み込む様に掴んだ。
「あーあ、避ければよかったのに調子に乗っちゃったね」
両脚を掴まれ、レマサは空中で動けなくなった、かのように見えた。
だが、
「ッ……!」
レマサが掴まれていた両脚を強引に開き、オオガキの両手が弾かれる、更に腹筋の力で無理やり体を起こし、そのままの勢いでオオガキの顔面に、両手をクロスしたチョップを叩き込んだ。
「いっ……てえええええ!!!」

「まあ、今のは予測できないよね。とりあえず基礎は合格、慢心をなくせばなおよしってとこかな」
「おお…でも相手が武器使って来る場合の対処とかはどうなんだ?素手の肉弾戦しか稽古きてないけど」
「今回叩き込んだのは、人間の関節で行える攻撃パターンだよ。あとら相手のリーチや刀身に合わせて臨機応変に対応するしかない。こればっかりは実戦で慣れる他ないね」
「実戦…か」
オオガキの顔がニヤつく。
強くなった自分を試したくて仕方ない、という顔だ。
「じゃあ実戦訓練といこうか、始め!」
そうなることを見越して、レマサは闘う相手を呼んでいた。
「ん?何、殴りかかっていいの?」
状況の把握できていないオオガキに、レマサが答える。
「いや、別の相手を呼んであるから、そっちと頼むよ。予定ではこのアリーナの何処かにいるはず」
「へえ…いつの間に入ってきたんだか。ちょっくら探してみるか」
と、オオガキが動こうとしたところ、アリーナの入口側から走って来る人影があった。
「うおー悪いれまちょ!遅れた!!」
どどど、と地を響かせながら走って来る。
「あれ?隠れてるんじゃ?」
オオガキが聞くと、レマサは、
「ああ、そっちの方法でいくのね」
ぽそりと何か言う。
「ん?なんだって?」
オオガキには聞き取れなかったらしく聞き返すが、レマサは何でもないよ、と言い、
「彼が君の相手だ、まあ頑張って」
遠くにあった人影も、ようやく二人の前に現れて、
「でかっ」
挨拶もなしにオオガキが放った言葉は、その相手に対する第一印象に他ならない。
身長はゆうに2mであろう巨体、隆々とした筋肉がその巨体を更に大きく見せて いる。
オオガキが顔を上げていくと、その男と目が合い、
「あれ?」
何処かで見た顔。
「ん?」
相手の方は心当たりがないらしく、オオガキの反応に対して疑問の声をあげる。
「いや、気のせいかな…どっかで会ったことないか?」
「悪いが覚えてないな…」
「いや、それなら別にいいんだ、ただの記憶違いかもしれないし。俺はオオガキだ、よろしく」
言って、オオガキが手を差し出す。
「おう、アークズだ。見ての通り種族はジャイアントだが、まあ基本ヒューマンと変わらないんで気にしないでくれ。よろしく」
アークズと名乗ったジャイアントも手を出し、オオガキの手を握り、そして、
「うおおおおおりゃあああああ」
思い切り、上空へ投げ飛ばした。
「うおあああああああ!?」
オオガキが、突然の浮遊間に悲鳴をあげながら勢いの頂点までのぼり、
「うわわわわあああああああ」
今度は悲鳴をあげながら落下してきた。
それを、下にいるアークズが受け止め地面に降ろす。
「油断大敵、はじめ!って言ったからね」
横で眺めていたレマサが、心なしかにやけながら言う。
「うむ、俺じゃなければもっと悲惨なダメージだったぞ。握手を求められたら手首が折られると思ったほうがいい」
く…。と、オオガキはいまいち納得がいかずに唸る。
「あーくそ。やられたぜ。しかし暑いな、ちょっとローブ脱がせてくれよ…っとぉ!」
オオガキが言いながらローブのボタンを外し、右手に持った次の瞬間、アークズの視界が紅く染った。
血ではない、オオガキのローブで視界が奪われたのだ。
「ぬお!?」
今度は、アークズの方が不意をつかれて素っ頓狂な声をあげる。
ローブを顔からとった時、オオガキは既に後ろに回り込み剣を構え、その状態で静止していた。
「ふっ、あんたの方こそ油断大敵だな」
オオガキが得意げな顔で笑い、それに続いてアークズも笑った。
「確かに油断した。いや、なかなかやるじゃないの、してやられたわ、はっはっは」
そんな二人の横で、レマサは感心していた。
「がっきー何それ、そんな凄い動き出来たの?一秒たらずであそこから剣とってきて、しかも背後とったよね」
オオガキは、ローブに手を掛けてから一瞬のうちに、そのローブをアークズの顔面に被せ、10m近く離れてたところにある剣を取り、その後アークズの背後に回り込んだのである。
「ま、まぁな。どうよ、これ」
オオガキが、息をきらせながら言う。
足元も若干ふらついている。
「ああ…ハイリスクハイリターン系の能力なのかあ。でも鍛えればまだまだ伸びそうだね」
オオガキが言わずともレマサはある程度理解し、これからの特訓方法を考える。
「ま、その技はとりあえず置いとこうぜ。今は喧嘩だケンカ!ケンカをおっぱじめようぜ!」
アークズが言うと、別にケンカじゃねー、とオオガキに訂正されつつ、彼の呼吸が整うのを待ってから、再び肉と肉のぶつかり合いがはじまった。



………。
森の中、夕陽を浴びながら彼は目覚めた。
いつの間に眠ったのか、何故こんなところにいるのか…。
寝起き故か記憶が曖昧だ。
身体を起こしてから気付いたが、眠っていたのは、葉でつくられたベッドの上らしい。
手を伸ばせば届く距離には、自分の愛刀も置かれている。

しばらくぼうっとしていると、遠くから何かの足音が聞こえてきて、思わず息を潜める。
夕日に照らされ見えた足音の正体は、褐色の熊、大した脅威ではない。
念のため愛刀を手元に寄越し抜刀しておく。
その状態で熊を見据えていると、向こうもこちらに気付いたのか、目が合う。
熊は歩速をかえずにこちらへ近付いてきたが、臨戦体制になる様子はない。
不思議に思い眺めていると、熊は目の前で止まり、地面になにやら、爪で文字を書きはじめた。
「マ…ナ…?」
カタカナで、マナという二文字。
マナといえば無論、魔力のことだ。
何故クマがそんなことを書くのか疑問に思っていると、夕陽が沈み、辺りにマナの力の漂う時間帯になった。
同時、目の前のクマが光を放ち、

ーーーー、人のカタチに、変貌した。




森で目覚めた男の名はケイゴ。
光に包まれ現れたモノの名はタルラーク。
舞台裏の物語が動き出す…。

stage2-16 これから

「その後私は、何年も二人を探してるけど、手がかり一つないわ…」
マリーが語りを終えて、一息ついてから言う。

周りにはテーブルを囲むように、オオガキ、ウェリアム、スバル、エイジが座っている。
「マリーちゃん…」
ウェリアムは、マリーの悲しい過去を聞いて泣きそうになっている。
他の男三人はそれぞれ頭の中で話を理解して、話を始めた。
先に口を開いたのはオオガキだ。
「しかし、それから三年だっけ?そんだけ探して手掛かり一つないとはなぁ……そのタルラークって奴はどこから情報を集めてたんだよ」
「タルラークは…多分、ドルイド僧だったし、伝承とか魔道関係の知り合いが多かったんだと思う。でも私、タルラークの知り合いなんて全く知らなくて…」
それを聞いたエイジは、
「探す手段があるのならとうに見つけてるだろうさ、まぁ情報収集は俺の専門だ、任せてくれていい」
その言葉を聞いたマリーは、エイジに対するイメージを、恐怖から→心強い味方と思い直した。
その横でスバルが言う。
「それよりも、もう三年たってるわけだが…」
スバルの言わんとすることを先回りして、エイジが答える。
「グラスギブネンは完成してるんじゃないか、ってことか?」
「あ、確かに。こんだけ経ってれば完成もするよなそりゃ」
オオガキが納得するが、エイジはそれを否とした。
「完成しているなら、奴等は何故攻めてこない?人の殲滅以外に目的があるのか?話を聞いた感じじゃそんな風には見えないが」
スバルは首を傾げ目を瞑りながら、
「それもそうなんだよなぁ。そんな化物が現れたならすぐ噂になるハズだしな…」
三人のやり取りをマリーが聞いていると、オオガキが素朴な疑問を取り出した。
「つーかそのギブネンも重要だろうけど、お前らケイゴのこと忘れてね?」
「…」
「…」
「エイジさんはともかくすっちー、あんたが黙るのはダメだろ…」
「いや失敬、その少女の話が実に興味深くてね。そうだそうだ、元はその捜索で呼ばれたんだったな」
エイジは忘れてたことを隠しもせずに告白する。
「そうそう、興味深かったからな、仕方ないな」
スバルも続いて言う。が、オオガキとウェリアムに白い目で見られたのは言うまでもないことだろう。

「まあどちらにしても、ケイゴとやらはこの辺では見つからなかったんだろう?死体もないなら生きて何所かに連れ去られただけだ、安心しておけ」
エイジが言うが、どう考えても不安を煽っている言い方としか思えない。
続いたスバルが、今後の方針をまとめに入った。
「どの道、これ以上山を探しても無駄だよ、こっちはエイジの情報待ちになる。で、」
マリーの方をチラリと見てから続ける。
「グラスギブネンやらなにやらの方だ。俺はとりあえず、こっちに協力しようと思うんだが…」
それを聞いたマリーの顔が、驚きを帯びながらも明るくなる。
「がっきー、ウェリ、二人はどうする?あ、ちなみにエイジ、そっちに協力は…」
スバルが言い終わる前にエイジは、
「いらんいらん。関わらないでくれるのが最大の協力だよ。チームは苦手だ。まあ、下僕になるというのなら……」
「な、なんでこっちを見ているのです…?」
何故かエイジの視線を受けたウェリアムが言う。
その横でオオガキは、
「ま、奴隷契約は勝手にしろよ。俺もマリーに協力するぜ、じゃーなウェリ」
「えっ!!わたしもマリーちゃん手伝うよ!!!」
「それは残念だ、奴隷か実験体になりたければいつでも言ってくれたまえ」
「なりませんよ!!!」
ウェリアムが叫ぶ横で、スバルは耳を塞ぎながら、
「ウェリうるさい。んで、今後具体的にどうするかを決めたいワケだけど」
ウェリアムは「理不尽な!」と言った後に静まったので、スバルは皆を見渡す。
「とりあえず俺は情報収集に徹するぞ。そこの少女に協力するつもりはないが、グラスギブネンの話は興味深い、傍聴料にそっちの情報もわかれば教えてやるよ」
エイジはそれだけ告げると立ち上がる。
「なんだ、もう行くのか?」
スバルが聞くと、扉に向かい歩きながら、背中越しにヒラヒラと手を降った。
それが答えなのだろう、スバルもそれ以上は触れずに、残った三人に向き直る。
「せっかちな人だね」
ウェリアムが言うと、スバルは、
「みんなで集まってワイワイってタイプじゃないしな、やる事が決まったから仕事に入ったんだろうさ」
会話の切れ目に、マリーが口を挟む。
「で、私達はどうしようか…。ギブネンもタルラークもルエリの情報も、全然わかってないけど…」
「俺は」
オオガキが言いながら、座ったままこぶしを突き出し、
「修行するぜ。まずはこの力を使いこなす…!……いてえ」
「完治してないのに正拳突きなんかするからだよ兄貴」
ウェリアムに笑われた。
「まぁガッキーは休養後修行ね、俺はどうしようかなぁ…。闘いに身を投じるなんて考えもしなかったし……」
スバルが意識せず言った言葉を聞いて、マリーは気まずくなり、
「あの…本当に…いいんですか?これは私の問題だし…」
「いやいや、この世界を侵そうとしてる奴等がいるんだよ、知っちまったなら止めるしかないよね」
「うわすっちーかっこいい惚れる」
「ウェリみたいなやかましい小娘に惚れられてもなあ…」
「ひでえ!!」
いつも通りウェリアムを無視して、スバルは話を進める。
「そうだな、せっかくだし新しい魔法でも覚えようかな?どうせ情報待ちだし、街とダンジョン渡り歩いてさ」
「へえ、楽しそうだな、俺も行っていい?」
オオガキが言うが、スバルは
「いや、その力使う度に倒れられちゃ困るし、でも使いこなす修行するなら連続使用するんでしょ?ダメダメどっかの街で修行して」
「…そりゃそうだわな。ま、俺はどっかに滞在して修行かな」
「じゃー私も修行するよ、あにきと!」
「私はスバルさんについて行って魔法習得の手伝いをしたい…です」
スバルはマリーの実力を知っているのでそれを快諾し、オオガキは、ウェリごときが修行相手になるかよー邪魔だよー、なんてぼやいていたが、なんやかんやで他の三人に丸め込まれて行動を共にする事になった。



翌日、ティルコネイルの広場にて。
オオガキの声が響く。
「もう行くのか?ちょっと急ぎすぎじゃねえ?」
「エイジの情報収集能力なら、一月もせずに調べ上げるだろうからね。それまでに新技の一つも覚えないと」
「そうか、んじゃ一月後にはまた会えるってこったな。俺もそれまでには強くなっとくぜー」
「生きていれば一月後に。昨日は来なかったけど、敵の刺客には気をつけてね、ほんと」

一昨日襲撃してきた男、タスクは、昨日は現れなかった。
念のため交代で見張りをしながら眠ったのは徒労になったが、襲われるよりはいいと言えよう。

その後しばらく話した後、スバルとマリーはティルコネイルを発った。

「あの二人、大丈夫かな」
ウェリアムがオオガキに尋ねる。
大丈夫か、というのはおそらく、スバルのロリシスコン属性のことについてだろう。そう解釈したオオガキは、
「大丈夫だろ、すっちーの性癖、マリーには適用されないみたいだし」
「いや、そんな心配してないけど……ていうか適用されても襲うような人じゃないでしょ」
「ん?じゃあ敵の話か?それなら緊急用のアイテムいっぱい貰ったろ、エイジさんに」
「まぁ、そうだけど…心配だなぁ」
「いやおめーは自分の心配しろよ、襲われても守ってやんねーからな。自己防衛できるくらいには強くなっとけよ」
「え!アニキ守ってくんないの!?」
「……そんな余裕ないだろ…ったく。いいからこっちも修行だ修行!とりあえず俺らより強いひとに稽古つけてもらうぞー」



「で、何で戦闘の修行で私のところに来たのかね」
ダンバートンのヒーラーの家にて、医者であるマヌスが言う。
「確かに私の筋肉美は素晴らしいものがあるがね、医者である私に頼むのはやはりおかしいと思わなかったのか?」
「いやぁ兄貴が適役だって言うから…。あ、あと怪我してもすぐ治してもらえるし!」
「で、その兄貴はどこに行ったのか」
マヌスと話すのはウェリアム一人で、オオガキの影はない。
一応知り合いであるマヌスならばウェリアムも鍛えやすいだろうという考えのもと送り出されたが、この筋肉ヒーラーはあまり乗り気ではないらしい。
「兄貴は別の人のところに行ったよ、超スパルタだから私には無理だそうで」
ウェリアムが拗ねながら言う。
「うー、でもマヌスさんも稽古つけてくれないんじゃあどうしようかな……」
ウェリアムが本気で考え込み始めたとき、マヌスが言った。
「誰がやらないと言った?私の仕事を一ヶ月手伝うという条件つきならば受けてやろう」
「えっ、ほんとに?」
「うむ、ではまず昼飯を買い出しに行ってくれ、ダッシュ!」
「えっ…それってただのパシリ…」
「体力作りは基礎の基礎だ!ダッシュ!!」
マヌスに大声を出されてウェリアムは飛び上がり、ダッシュで食堂へと向かった。
走りながら彼女は思う。
(こっちも意外とスパルタになりそうだよ…兄貴め…)



同時刻、アルビダンジョンロビーでは、オオガキが一人座っていた。
アルビダンジョンには、バトルアリーナという特別施設が組み込まれており、特定のアイテムを祭壇に捧げると入場することが出来る。
昔はここでバトルトーナメントが開かれたりして盛り上がったものだが、いまや別の、広いアリーナができた事によって過疎化し誰も使っていない。

「お、いたいた。お待たせがっきー」
ロビーの入口から、男の声がする。男はオオガキの前まで歩み寄ると止まり、オオガキは立ち上がって挨拶する。
「よっ、悪いな、付き合ってもらって」
「構わないよ、事情はスバルからも聞いてるしね」
オオガキと話す男の名は、レマサ。
銀の単発にカジュアルな服装、首からはヘッドホンを下げており、これといって強そうな体格ではない。
しかし、彼がオオガキの選んだ、稽古相手、ある意味では師匠となる男である。

二人はその後すこし会話をし、アリーナへと入る。

「んじゃまぁ、まずは実力を見せて貰おうかな、とりあえずぜんぶ躱してみてよ」
レマサが、拳を突き出しながら言い、オオガキも了解し頷く。
「じゃ、いくよ」
言葉にオオガキが身構える。
レマサが足を上げ、一歩踏み出す…。
一歩、確かに一歩だ。しかし、
「なッ…!」
どうやったのか、彼はその一歩で、五歩分ほどのオオガキとの距離を詰め、拳をオオガキの胸に軽く突き立てていた。
「んー、この程度も躱せないのはちょっとなー。鍛錬が足りてないんじゃない?」
思ったよりも大きな力の差、それを見せられたオオガキが黙る中、レマサは続ける。
「ま、そう落ち込まないでよ。このくらいすぐ避けれるようになるって」
レマサがフォローすると、オオガキは笑い出して、
「ふっ…はっはっは!つえーなあれまっち!でも俺は落ち込んでるんじゃないぜ、嬉しいのよ!こんだけ強い人に鍛えてもらえるなんてな!」

思いの外ポジティブだったオオガキに、レマサは少し驚き、同時に安堵する。
「いいね、そのいきだ。それならこっちも遠慮なしで鍛えられる」
「改めてよろしく、れまっち」
「こちらこそ」
二人は拳を付き合わせてお互いを見やり、何かと恥ずかしくなって目をそらした。


猶予は一月か、それとももっと早くになるのか。
どちらにせよ、こちらから攻めずとも敵は現れる。
彼らの厳しい修行の日々は、まだ始まったばかり。

~~~~~~~~~~~~
上手い事しめられなかった感。

stage2-15 光の三戦士、その運命④

「いっ…」
焚き火を囲み会話をしていると、マリーが小さく悲鳴をあげる。
「ん?どした?」
ルエリが尋ねると、
「いきなり人差し指から血が出たわ……」
と言い、左手を差し出す。
タルラークはそれを見て、懐から包帯を取り出し、小さく切って応急処置をする。
「この程度なら問題ありませんね、右手だと弓師としての腕が落ちたかもしれませんが」
「うー……なんか不吉ねぇ」
「その辺の木屑で切っただけだろ、気にしすぎだ」
「まあ…そうかもしれないけどー。ちょっとは心配してもいいんじゃない?」
「ぷっ、あはは!その傷で心配するなら俺の毎回の戦闘はどうなっちまうんだよ、ボロっボロだぜ」
「そういうことじゃないんだけど……。まーいいわ、そろそろ行く?」
「そうですね、行きましょうか」
「うっし!行くかあ!」


三人は焚き火を消し、立ち上がる。
目の前には、巨大な鍵穴、そして扉がある。
三人は鍵を差し込み、まわした。
扉の錠が外れ、ズズズ、と、扉は上にせり上がっていく。
運命を分かつ、最後の扉は開かれた。
ここが日常との境界線。
その一線を、三人は超えて行く……。



開いた扉の向こう、三人はその中に入る。
魔族は見当たらない。
不気味な装飾の灯火が点いている以外は、他のダンジョンより広いというだけの、普通の広間…かに見えた。
ふと、上を見上げたルエリが、ビクリ、と身体を強張らせて叫ぶ。
「う、上だ!!」
言葉に従い、マリーとタルラークも上を見上げる。
見上げた先にはーーー。

天井を覆う巨体。
天に縛られた身体は張り付けにされ静止し、その目は黒い拘束具によって塞がれている。
其の両の手には、刀身10メートルにも及ぶかという大剣が二対。
張り付けの背中からはみ出し覗くのは、白き翼。
其の異形の名はーーー、
「グラスギブネン…」
タルラークが、ぽつりと。信じられないという声で呟く。
彼の目は驚愕に見開かれて、足は無意識に後ずさっている。
三人は十数秒の間無言で上を見上げていたが、不意にルエリが前を見て、
「っ…誰だ!!」
と言ったことにより、他の二人も我に返る。ルエリの視線の先には誰もいないが、しかし空間に靄がかかったようになっており、
「誰だ、とは私が聞きたいな……此処を何処だと心得ている」
靄の中から言葉と共に、男が姿を表す。
全身を黒い鎧で包んだ…否、それは鎧なのか、それとも皮膚なのか。
魔族なのか人間なのか、それすらもわからない身長2m超の男が、三人に問いかける。
その問いを無視し、タルラークは問い返した。
「聞きたいのは私の方だ!ここは何処だ、あなたたちは何を…この生物兵器を蘇らせて何をする気だ!」
タルラークらしからぬ語気の荒い口調に、ルエリとマリーは衝撃をうけるが、タルラークはそんな事を気にできる余裕もなく。
「ほう、中々に博識な奴がいるな。忌々しい戦時の兵器の話など語る人間はいないと思ったが…何処で知ったんだ?」
男が聞く。
「師から聞い……」
と、そこまで言ってタルラークは気付く。
先程男の現れた靄の中から、新たな人影が現れている。
二人。
片方は、漆黒のローブ、その淵には豪華そうな装飾がしてあり、背中からは幾枚かの純白の羽が伸びており、この異質な場の中でも、一層奇妙な雰囲気と迫力を放っている。

もう一人もまたローブで全身を覆っているが、こちらは装飾のない緋色のローブで、羽も生えていない。

その容貌を、タルラークは見たことがあって。
その顔は、長い日々、魔術の稽古をつけてくれた人のもので。
タルラークは今、死んだと思われた師と、再開したのだ。

師の名はマウラス。
第二次モイトゥラ戦争で華々しい戦績を残すも、戦後、魔族の残党により自宅を襲撃され、家族と共に死亡した。
少なくとも、タルラークはそう聞かされていた。

「何故…あなたが……こんなところに…!」
動揺を隠せず震える声で、タルラークは師に問うた。
「懐かしい顔がいるな……何年ぶりになるか…」
師は顔をあげ、ローブの中の顔が明かりに照らされ映る。
その顔は、タルラークの知っていた頃よりも痩せ、目には深い隈を残し、髪も髭も、現在30代だとは思えない程に白い。
「あなたは…あなたなら知っているはずだ…この兵器が人々に何をしたのか!!戦ったことのある貴方なら!」
それなのに何故、とタルラークが続ける前に、マウラスは言った。
「人間は、醜い」
タルラークは言葉の意味が一瞬わからず、息を呑む。
「奴らは私の妻を奪い、娘を奪った。私に命を守られておきながら、私の力を恐れ、反逆の徒などと狂言を吐いてな」
聞いたことのない話に、タルラークは動揺する。
「何を…貴方の家族を襲ったのは、そいつら魔族のはずだ…。人間だとしても!グラスギブネンなんてものを蘇らせれば、無関係な人々が死ぬ!」
「そうだ、死ぬだろう。構わぬ。人の本質など皆同じ…。貴様らが我等の野望を阻止したとして、次に殺されるのは…」
マウラスの言葉に、我慢ならないといった風にルエリが口を挟んだ。
「次は俺達の力が恐れられて、殺されるってか?敵は全部殺す、味方も一部が敵になったから全部殺す。あんた、一人で生きていくのか?」
マウラスも言う。
「それでも敵はなくならん。だが一時の平穏は得られるだろうよ」
敵も味方も殺し平穏を得、つぎに敵が現れればそれを繰り返す。男は、そう言っているのだ。
「あり得ないだろ、あんた…。敵は倒す!味方が敵になるならそいつらもブチのめす!それで解決だろうが!!今は、上のアイツをぶち壊す!終わったら、あんたを襲った人間どもをぶちのめす!」
言って、ルエリは剣を天井目掛けてぶん投げる。
剣は吊られた巨体の眉間の位置に刺さる起動で飛んでゆくも、
「…若いな、若造」
マウラスが放った魔法により起動を逸らされ、天井に突き刺さった。

ルエリの言は、確かに世界を知らない若造の言葉だ。
どうしようもないくらいの大きな権力というものが、人々の世界には存在した。

見兼ねたかのようにマウラスとルエリの言い合いに口を挟んだのは、黒いローブの、羽根の生えた魔族だった。
「愚かな人間よ…どちらにせよ貴様ら三人は生かして返さん。我が手にかかれる事を光栄に思えよ、人間」
言いながら、男は一歩踏み出した。
「キホール様!貴方が手を下すまでもない、ここは私が…」
「下がれモルガント。ここまで辿り着きし褒美だ。奴等は私が直々に殺す」
御意、と。モルガントと呼ばれた男は下がる。

「…どうする…?タルラーク」
ルエリがタルラークの方をみると、
「うわっ…その汗…どうしたんだよ…?」
タルラークはその問いには答えず、声の限りに叫んだ。
「ルエリ!マリー!ここは退いて下さい!!我等の叶う相手ではない!」

タルラークは知っていた。
先程、ローブの男が呼ばれたその名を。
『キホール』
その、邪神の名を。実力を。
故に理解してしまった、どうしようもない力の差を。
ならば、せめて。
「ーーーー」
詠唱するのは転送魔法。
タルラークの使える力では、一人しか移動させる事は出来ない、だからーー。
「マリー!貴方だけでも…」
言いながら、後ろにいたマリーに触れ、詠唱を完了する。
マリーは、え?。と、疑問の表情を浮かべながら、この場から姿を消した。

彼女がそこで、最後に見た光景。
苦い顔をして、目で謝るタルラーク。
悟ったように微笑み、こちらを送り出すルエリ。
マウラスは信じられないものでも見たかのように目を見開き、モルガントは黙して佇む。
そしてキホールの周囲には、目で見えるほどの魔力の本流。

そしてマリーの意識は移り、次に見えたのは、見慣れた、三人でよく話した丘の上だった。



「今回は骨が折れそうだな、なあタルラーク」
「ふ、暴れるだけあばれてやりましょう。頼りにしてますよ、ルエリ」

二人の男は強大な敵に挑んだ。
彼らのその後を、マリーは知らない。




やっと過去編おわった
なげーよ
盛り上げる場所間違えた気がするよ

stage2-14 光の三戦士、その運命③

「人間か…久しぶりの来客だな…」
ドスの効いた低い声が響く。
光に包まれた先でルエリが見たものは、
「少しは、俺を楽しませてみろ」
眼前で男が、剣を振り上げる光景だった。
「ぬううううらあああああああ!!」
「う…っ…おおおお!?」
振り下ろされる剣を、ルエリは驚愕まじりになんとか弾く。
しかし、男の手は更なる攻撃を繰り出してくる。
「なんっ…だっ…お前!」
男の見た目は、隻眼にして隻腕、右手はなく、左眼には眼帯をしている。
そんな男が、刃先1m以上であろう剣をもって襲いかかってきている。
それをルエリは受け流しながら、思う。
先の奇襲には不意を打たれたが、この男、実力的にはたいしたことはないのか、がむしゃらに剣を振っている、という感じだ。
ーー勝てるな。
ルエリは冷静に彼我の実力差をはかり、勝利を確信する。
(襲われてる理由なんて後で聞き出せばいい、さあ、倒すぜ…!)
心を決めて、剣を握り直す。
敵の攻撃を見極め、己の刀身を利用して相手の剣を滑らせ、
「悪いが左腕も頂くぜ!」
敵の剣をくぐり抜け、相手の肩目掛けて剣を斬り込もうとした、が、
(う…なんだ…?)
ルエリの身体が揺らめく。
異変を感じたルエリはすぐさま攻撃をやめて飛び退き、相手から距離をとる。
「流石に一筋縄じゃあ行かないってワケね、やるじゃないか、アンタ」
数m離れた位置で、ルエリが相手に話しかける。
「緋色の髪を肩までだらしなく伸ばした隻腕の男は、意外にも会話に乗ってきた。
「あたりめえよぉ。この俺をだぁれぇだと思ってやがる。このフランボウ=ローラン様があ、おめえみてえな小僧にやられるかってえのよお」
男、ローランは、妙に間延びした口調で語りながら剣を地面に突き刺すと、懐から何かの瓶を取り出して口に運ぶ。
隻腕の男が、その片腕から剣を離している今は絶好のチャンスだが、ルエリはそんなところで攻撃を仕掛ける男でなく、戦いに誇りを重んじるタイプだ。
ルエリはとりだされた瓶にぎょっとして、回復薬の類だったらたまんねえぞ、と目を凝らしてその瓶を見る。
しかしてその中身は、
「ういぃ~っく。やっぱり酒は戦場で飲むのが至高よなあ。俺に挑む愚ぉかな奴の死骸に座りながらならば尚、なあ」
酒瓶から口を離し、ローランはルエリを見据えながらに言う。
だがルエリも、そんなことで気圧される男ではない。
「おいおいアル中のおっさん、それ以上ムチャクチャな動きで俺に勝とうっての?そりゃーナメすぎだぜ」
ルエリの挑発的な言葉を、ローランは笑い飛ばしながら返す。
「があっはっは、威勢のいいガキだあなぁ、おい。一ぉつ、教えてやろう。俺の技は『酔拳』だ。酔えば酔うほど強くなぁぁるう!あんまなめてっとよう、死んだことすら気付かず終わっちまうぞお?」
男、ローランは酒の影響か、それとも戦いの中に喜びを感じる性質なのか、狂気じみた笑顔で口を最大まで吊り上げ、片方しかないその左腕で剣をとる。
しかしその足元はふらいていて、いまにも倒れそうだ。
「ぐ…ぐっくっくっく……さあああて征くぞ、この俺がぁ、悪夢とまで呼ばれた俺がいぃくぅぞぉおおう!」
男が独り叫ぶ中、ルエリの背後から、シュイン、と転送術の音が聞こえる。
マリーとタルラークが、遅れて現れたのだ。
「大丈夫ですか、ルエリ!」
慌てたまま尋ねるタルラークに対し、ルエリは落ち着いた様子で、敵から、ローランから目を離さずに答える。
「ああ、大丈夫大丈夫。大したことねーぜ、あいつ」
「あいつって誰よ?」
と言いながらも、ルエリの視線の先に目をやったマリーは、相手の存在に気付く。
「酒くさそうなオッサンねえ…。敵ならさっさと倒しちゃいましょ、こっちは三人だし」
マリーは危機感もなしにそう言うが、その横のタルラークはボソリと呟いた。
「あの赤髪、それに隻腕と隻眼……まさか……」
タルラークの言葉に、ルエリとマリーは微妙な疑問を覚えたが、
「なぁぁああんだあ、三人かあ?構わん、全員できやがれえぇい!」
という敵の大声によって、なかば無理矢理戦闘体制をとらされる。
いい加減闘いたくて仕方ない様子のローランが一歩を踏み出そうとすると、今度はローラン側の背後から声が聞こえた。
「あー、いたいたぁ!やっと見つけたわぁ!」
響く声は緊張感のない、甲高い少女の声だ。
声のした方角をルエリ達三人が見ると、ローランの後ろ、墓地になっているらしい場所から金髪の少女が歩いて来る。
ルエリが、
(敵が一人増えたか…男は俺がやる、向こうは頼んだ)
と、背後の二人にサインを送る。
が、少女の更に背後から、更に新たな影が、いくつも姿を現す…。
「どこで酒を飲もうと勝手だが、刻限は守ってもらわねば困るな、死神。いや、悪夢だったかな?」
聞こえてくる男の声に隻腕の男、ローランは、
「タスクにエリーゼかあ?しばし待てえい、奴らを殺したらすぐにゆくわ」
先程よりも落ち着いた声で話しかける。
「あぁら、こんなところまで来る人は珍しいわねぇ、って子供じゃない。子供って図々しくて嘘つきで、私大ッ嫌いなのよねえ」
金髪の少女が、ルエリ達三人を見る目が、特にマリーを見る目が狂気に満ちたような気がするが、
「おや…、エリーゼ、私は貴方も子供だと思っていたのですが。実は年上だったりします?」
という、タスクと呼ばれたの一言と同時に、その狂気はどこかに消えた。
「レディに年齢を尋ねるなんてナンセンスよ?タスク」
「おや、これは失礼。ジェントルとしたことが失敗してしまった」
後ろでの掛け合いに、ローランが言う。
「チッ、いいから少し黙ってやがれぇい…。いや、もういいわあぁ…、殺っちまおう」
と、ローランがついにその一歩を踏み出すと。
パチン、と何処からか、指を鳴らす音が聞こえ、
「そんな時間はもうないよ、ローラン。君は闘いたいだろうが…残念だったねぇ。」
胡散臭い男の声、それと共に姿を現したのは、やはり見た目も胡散臭い、白い長髪に黒い仮面をした、細身の男だった。
ローランとルエリの間に突如現れたその男は、
「ええい!!どいつもこいつもおぉう!邪魔ばかりしやがあっ……」
仮面の男は、ローランの言を最後まで聞かずに指を鳴らし、その音と共に、ローラン、エリーゼ、そしてタスクは何処かへと消えた。
仮面の男は、状況について行けずに取り残されているルエリ達の方に向き直ると、
「君達は…我々と永遠に対立するのだろうね。それが歴史の定めた運命…そんな予感がするよ」
マリーとルエリが?マークを浮かべる中、タルラークが言う。
「貴方達は何者ですか、この『楽園』で一体何をする気です」
「楽園…楽園か。周りをよく見たまえ、ここが楽園に見えるのかね?…その昔に私と娘の堕ちた『楽園』には似ているかもしれないがね」
仮面の男は何か思い返すように虚空を見つめたが、すぐに、
「ここが楽園かなどどうでもいいことだ、個の捉え方次第で空間はどうとでもとれるものだよ。さて、私も行かねばならない。まあ、そうだな……この先の光景を見て、我々を止めるという結論に至るのならば、いつでもかかっておいでなさい。協力するという結論に至るならば…来る者は拒まないが去る者はけして許さない、覚悟することだね」
長々と男は言うと、こちらの反応も待たずに指を鳴らし、姿を消した。

「何だったんだよ…あいつらは」
ルエリが剣を腰に収めながら、唖然と言う。
タルラークは、
「おそらくは、魔族が凶暴になっていることの首謀者達でしょうね……」
「でも、口ぶりからしてその先がありそうよね」
「ええ、恐らく魔族の凶暴化は二次災害のようなもの。彼らは、このティルナノイで、更に大きなことの準備をしている……」
そんな会話の中、ルエリが、
「まあ、推測はその辺にして進もうぜ、進めばわかるだろ、多分」
と言ったので、三人は進む。
敵の歩いてきた方向を遡り進むと、不気味なダンジョンがあったので、三人はそこへ入った。
と、
「なーんか変な感じね、このダンジョン」
内部ロビーで、マリーが言う。
「だよなぁ。なーんか足りないっつーか」
「ええ、足りませんね。女神像がない…」
そのダンジョンには確かに、女神の封印の証である像がなかった。
「つまり…えーっとどうなるんだ?」
アホのルエリが言う。
「つまりです、ここは元から人間の避難場所でもなんでもなく、魔族の創り出した迷宮、ということでしょう」
予想外の罠があるかもしれないので慎重に、というタルラークの言葉とは裏腹に、何事もなくボス部屋まで辿り着く。
何事もなく、といってもモンスターとの戦闘は多々あったので、三人はボス部屋の前で焚き火をたき、一時の休息にした。
敵陣のど真ん中で、肝っ玉の太い奴等である。

「しっかし拍子抜けねぇ」
「ほんとに、何もなかったなあ」
二人が口々に言う中、タルラークは額に手を当てて考え込む。
(何故なんの罠も張られていない?さっきの人達は何者なのだ?敵ならば何故私達を始末しなかったのか?そもそも此処は『楽園』なのか……?この奥には何がある?進むべきか、退くべきなのか…)

「うわー、タルラークが熟考モードに入ってるわ…、しばらくはここ動けないかしら」
マリーがタルラークを横目に言うと、ルエリもタルラークに話しかけ出す。
「おーい、おいおいおい!おーーい!タルラーク!天パ!メガネ!おーいおーい!」
「………」
聞こえているのかいないのか、彼は目を瞑り黙ったままだ。
「ちっ、仕方ねえなあ」
ルエリはツカツカとタルラークの元に歩み寄り、
バッ!、と。
彼のローブを捲った。
「きゃっ」
と、マリーが小さな悲鳴をあげたが、
「うわーーーーーーーーっ!!!」
という、タルラークの更なる叫びで掻き消される。
「お、おい、何だ、別にローブの下が裸ってワケでもないだろ…」
タルラークの叫びに、実行犯のルエリが驚いてキョドりだす。
実際、ローブの下は普通に服もズボンも履いていたので、何の問題もない。はずである。
「なんてことをするんですか貴方は…。別に何ともないですがね?別に」
タルラークは叫び終わると素に戻ってルエリに言う。
「はあ……色々考えてた事が吹っ飛びましたよ…もう…」
溜息混じりに言われ、ルエリは一瞬悪い事したかな?と思うが、
「ま、まあ考えても仕方ねえって!さっきも言っただろ、進めばわかるって!」
ルエリが苦し紛れに、あたふたしながら言葉を並べると、タルラークは、
「ふふ、そうでしたね。考え込むのは私の悪い癖だ。ありがとう、ルエリ」
と。微笑みながら言った。
「あんたたちって、相性悪そうなのに最高のコンビよねえ」
マリーが体育座りで肘を膝につきながら、顔に手を当てて言う。
「いえ、そんなことは」
「ああ、ないな」
「えっ、違うの?」
二人して否定してきたので、マリーの頭に疑問符が浮かぶ。
「ばっか、俺とタルラークだけじゃあ華がねーだろ」
「二人ではありがとうなんて言えませんよ、変な空気になりますし」
「んだんだ。最高のトリオと言ってほしいな!俺の親愛なる左腕、マリーよう!」
「え、あ…うん!って何であんたがリーダーみたいになってんのよ!」
「ああん?俺以外に誰がリーダーやるってんだよ?」
ルエリが当然のように言う横、タルラークはしれっと、
「私でしょう。博識ですし」
「そ、そりゃそうだが……自分で言うかあ」

焚き火を囲んでの幸せな団欒の中も、確実に時は過ぎ行く。
そして、過ぎ去った時は戻らない。
彼らはもうじき気付くだろう。
幸せは、失ってから気付くものだと。
そして魔族の闇は、もう彼等の背後まで来ている…。


失ウマデ、逃ガサナイ。

stage2-13 光の三戦士、その運命②

ーー翌日、ティルコネイルの広場にて。
「よ、研究は進んだか?」
階段に座り込むタルラークに、後からきたルエリが声を掛ける。
「ええ…。もう少しで繋がります…貴方の夢と」
「おお!?ティルナノイってのが何だかわかったのか!?」
ティルナノイ…ルエリが夢で女神から聞いた単語だ。
「それは既にわかってますよ、というか前にも説明したはずですが……。ああ、食事中に話したから覚えてないんですか」
「おう!食事中の会話はほぼ頭に入ってねーぜ!」
ルエリが自慢気に言うのを、タルラークはツッコミもせずに受け流す。
「重要な話ですから、簡単にもう一度話しておきます」
ルエリが真面目に聞く体制になったのを見て、タルラークは続ける。
「ティルナノイというのは、伝承によると『楽園』。神々が住まう、老いも病気もない、永遠に幸せの続く世界、そう言われています。しかし何処にあるのかは一切わからず、私はティルナノイへの鍵は『ダンジョン』にあると、そう考えました」
「…でもダンジョンってーのは元々人間が造ったものだよな?それなのに楽園とやらと繋がってるのか?」
確かに、ダンジョンは人間が造った、本来はシェルターの意味をもつものだ。
第一次モイトゥラ戦争後は、魔族の巣食う場と化してしまったが…。
「そう、元は人間の創り出したものです。建築に関する資料も存在しますし、間違いないでしょう。ですが、第一次モイトゥラ戦争後は女神の手で守護されつつも、魔族のものとなっています」
「戦時に魔族が攻め込んできた時、仕方なしに女神が犠牲になって、魔族をそこに閉じ込めた、って話だよな。そこまではわかるんだが…」
「第一次モイトゥラ戦争から既に数十年…その間、魔族がなにもしてこなかった筈はない…。これを見て下さい」
タルラークはローブの内から、古い紙を取り出す。
「なんじゃこりゃ…設計図か?」
「その通り、ダンジョンの設計図ですね。これはラビダンジョンのものです。私はこれを見ながら、幾度となく実際の道筋と照らし合わせましたが…一致する道と部屋の配置はありませんでした。つまり、ダンジョンというものは最早、魔族の手によって全く別のものへと作り変えられている」
「へえ…、あいつら意外と頭いいんだなあ」
「私達が見ているのはほとんど低級魔族ですからね。上位の者は人語も話せれば罠を張ったり心理戦も出来ますり貴方より知能は上かもしれません」
「お、おい、バカにしてくるのはマリーだけで十分だぜ…」
「話が逸れましたね。ダンジョンは、入り口である祭壇に供物を捧げることで転移魔法が作動、捧げたものによって別の入口へと飛ぶ仕組みとなっていますよね?」
「ああ、コインを入れた時と、包帯を入れた時で道が違うな」
「この仕組みは、女神が魔族をダンジョンに封じた時に出来たものです。私はこの仕組みにこそ、楽園へ至る道が隠されていると思う…」
んー、と。ルエリは空を見上げて数秒静止して考えた後。
「つまり、手当たり次第にポイポイ入れてけば、いつか楽園に繋がるかもってこと?」
それを聞いたタルラークはふふっ、と笑って、
「ルエリらしい考え方ですね、それもアリだと思いますよ。まぁ今回は運良く手掛かりを入手したので、これを使いますが」
言って、タルラークが例の通行証を見せる。魔族…それもサキュバスからもらったものと言うと疑惑がつきないだろうから、とりあえずそれは伏せておく。
「ほおー、これが鍵ねえ。で、マリーが来たらすぐにでも行くのか?俺は構わないぜ?」
「いえ、今日はマリーは呼んでいません。ルエリ、貴方の見た夢が事実なら、ティルナノイではただならぬ事が起きているはず…そんな危険にマリーを巻き込むわけには」
そこまで言って、タルラークは気付いた。自分の頭上、葉の茂る大木の枝には、いつから居たのかマリーが座っている。
いや、最初からいたのだろう。
木の上のマリーが口を開く。
「ふふふ、ぬけているわねタルラーク!この木の上は絶好の昼寝処なのよ!話は聞かせてもらったわ!」
「へえ、今度俺も寝てみるかな」
突然のマリーの出現にルエリは驚きもせずに言う。
「貴方の体重では枝が折れます」
タルラークも動揺を消して言い、
「そうよ、私の寝床が折られちゃたまんないから絶対登らないでよね!!」
「ちぇー。俺は大人しく原っぱでお昼寝でもしてきますかねえ」
「私も宿屋で少し休むとしますか…それではまた」
タルラークはルエリにアイコンタクトし、ルエリもそれに返す。が、
「ちょぉぉっと待った!そんなことで話がそらせると思ってないでしょうね!」
「…駄目か」
「駄目ですか…」
駄目だった。
「いいから私も連れて行ってよ、足手まといにはならないってわかるでしょ?」
マリーが言う。
たしかに彼女の実力ならば足手まといになることはないだろう。
「マリー…今回ばかりは誰も行ったことのない、未知の領域です。何が起きるかわからない、無事で戻れるかもわかりません」
「そうそう。俺とタルラークはもう家族も心配してくれる人もいないからともかくな、お前が戻らなかったらダンカン村長が心配するだろ?育ての親といえ心配かけるのはよくねー事だぜ」
「う…でも…」
「わかったら今日は帰れよ」
ルエリとタルラークが諭すも、マリーは引く気配がない。
「だって…二人が戻らなかったら……私が心配するじゃない…!」
小さく零れたその言葉に、二人は何も言えなくなる…。
数十秒の沈黙のあと、ルエリがタルラークに視線を送ると、仕方ありませんね、といった表情でローブの青年も頷いた。
「よーし!マリー!荷物まとめろ!矢は大量に持っとけよ!」
「その前に村長にこの事を伝えないといけませんね、そちらから済ませましょう」
いきなりの二人の切り替えにマリーはちょとんとするが、
「おい早くしろよ、やっぱビビったのかよ?」
と、ルエリが歩き出しながら言ったのを聞いて、
「そんなわけないでしょ!あんたより先には死なないわよ!」
調子を取り戻し、二人の後ろに続いた。



ダンカン村長の説得は、思ったよりも簡単に済んだ。
というより、話を聞いた彼は何か悟ったように頷き、薬草や包帯を渡してくれたのだ。
三人は他にも必要なものを揃えて、バリダンジョンの祭壇に立っていた。
「ここから先は、何があるかわかりません。互いにフォローしあいながらも、自分の身を第一に行動してください。勝てないと悟ればすぐに撤退を」
「ああ、わかってる」
「了解よ」
タルラークの忠告に、二人が頷く。
では、と呟き、タルラークは一度目を閉じて呼吸を整えてから、
スッ、と通行証を祭壇へと置いた。

目映い光に目を閉じると、数秒の浮遊感が訪れる。
それが終わり目を開けば、そこはーー。
「普段のバリダンジョンとかわらねーな」
そこは、これまで何度と訪れた、鉱物の豊富に採れる場、バリダンジョンと変わらない。
「…とりあえず進みましょう、油断はせずに」
とりあえず三人は祭壇を降り、下の階層へと向かう階段を降りる。
その後一部屋、二部屋、廊下も歩き数部屋進んだが、
「やっぱりいつもと変わらないわね、あの手掛かり、偽物だったんじゃない?」
タルラークも、その疑問は抱いているが、唯一の手掛かりゆえ、今は進むしかない。
そしてダンジョン攻略は滞りなく進み二時間後、三人は、施錠された大部屋の前に立っている。
「うーし、行くぞ」
これまでの余裕で緊張は薄れたのか、ルエリが余裕の表情で鍵を差し込み、開場する。
ゴゴゴゴゴ、という音を残して、扉が上へと昇り、部屋の内部が確認できるようになる。
通常、ボス部屋と呼ばれるこの大広間を守護するモンスターは、こちらが来るのを感知すると、隠れずに部屋の中央部で立っているものだ。
それは、このダンジョンの頂点に立つ者という自信の表れであり、事実それは慢心でなく、ほとんどの者はかなりの実力を誇る猛者である。

しかし。
「……なにもいないわね」
マリーが部屋の外から見た視覚では、敵は見当たらない。
「よし、入って確認するから援護頼むぜ」
ルエリが言う。他の二人は基本的に遠距離攻撃を使うため、先陣をきるのは基本的にルエリだ。
いつもの流れと理解した二人も、各々の構えをとり援護体制に入る。
二人の背中を見る中、部屋の中央部に到達したルエリは、あたりを見回し、
「やっぱ何もいねーなあ、入っても大丈夫そうだぜ」
二人も続いて入り、何事もないままその先の部屋を解錠する。
「なんだか拍子抜けですが…これが…」
そして、三人は見つけた。
ティルナノイ…楽園への扉を。
「……なんだか…禍々しいわね…」
その扉はとても幸福に繋がるものとは思えない、まるで地獄の門のような形をしていて、三人は数秒息を飲んだ。
「……ところでこれ、どうやって開けんだ?扉っつーより石碑みたいだが」
言って、ルエリが扉に触れる、と。

シュン、と、ルエリの身体が消えた。
「……なに!?」
タルラークがいつもの丁寧口調も忘れて驚愕する。
一瞬続くか迷った後、万全をきすなら今突撃するのは間違いだという結論に辿り着く。が、それでも、
「マリー!私たちも続きます、援護は頼みました!」
「ええ!!」
マリーも無論ルエリを追う気だったのだろう、二人も揃って扉に触れ、異空間へと飛ばされる。



その先にあるのは果たして楽園なのか

それとも…。



「人間か…久しぶりの来客だな、…少しは、楽しませてくれよ」

~~~~~~~~~~
メリークリスマス!
今年の更新はこれで終わりだ!
半端なとこだな!
来年もよろしく!
プロフィール

アークズ

Author:アークズ
マビノギ的な小説はじめました。
でもマビノギじゃないかもしれません。
永遠の厨二病。黒歴史量産中。

カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
カテゴリ
月別アーカイブ
最新記事
最新コメント
FC2カウンター
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。