マビノギ的な内容の小説を書いてるかもよ。 マビノギ知らない人も楽しめるように書きたいのかもよ。

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stage2-22 獣達

「いくよ」
23時59分、バリダンジョンロビーに声が響く。
エイジが祭壇に乗り言ったものだ。
オオガキとアークズも続けて乗り込み、それを見たエイジが再び口を開く。
「ここから先は未知の領域だ。そして恐らく死地になるだろう。俺は別行動をとるから関係ないけど、二人ともお互い助け合う、という考えならやめた方がいい」
それに対しアークズが言う。
「無論そんな考えはないぞ。俺は目に入る敵を叩き潰すだけだ。背中は任せる」
オオガキも、当然だという顔で、
「あたりめーよ。どんだけやられても俺の敵は俺の獲物だ、立ち上がってぶちのめすから邪魔すんじゃねーぞ」
「ふ…了解、お前もな」
エイジは頷いて、
「無駄な心配だったか。…さ、行こう」

0時の鐘が響く。
バリダンジョンの上に丁度鐘があるので、ロビーには音がよく響いた。
ごぅん、ごぅん、という音が二度響き、三度目が響こうという時、通行証は落とされた。
鐘の音は遠のき、刹那の間、無音の世界が訪れる。
そして三人は『あの世』へ降り立った。



『来たわね』
タスクの脳内に、エリーゼの声が響く。
「0時ジャスト、やはり計画的犯行だったか?迎撃の用意とそちらの状況を教えてくれ」
『敵は三人、人間二人にジャイアントが一人ね。場所は中央広場、私の魔族で既に包囲してるわ。で、私は遠くから高みの見物。報告はこのくらいでいいかしら?』
「了解した。苦戦するようなら伝えてくれ、私も向かおう」
『はいはーい』
頭の中からエリーゼの気配が消えると同時、タスクは席を立った。



「さぁて、久々の獲物ちゃん達は楽しませてくれるのかしら?」
エリーゼが一人、楽しそうに言う。
彼女は広場から数キロ離れた位置にいて、到底オオガキ達からは視認出来ない。
エリーゼのいる場所は木の上なので、尚更見つけるのは困難だろう。
そして、エリーゼは超人的な視力をもって、数キロ先の広場の様子を見ることが出来た。
位置的にも遮るものはなく、オオガキ達が手の内を晒せば全て丸見えとなる。
「お手並み拝見だよ…っと」




刹那の暗闇の後、目を開けたオオガキ達の前に広がったのは、荒廃した村だった。
「気付いてる?」
エイジが二人に問う。
オオガキとアークズはそれぞれ武器を構えて応える。
「囲まれてるな…2…3体か…?」
オオガキが言うが、アークズが否定した。
「4体いるな。この周辺に隠れて3体、遠くに1体潜んでる」
それを聞いたエイジは、
「正解。遠くのは俺がやるから、こっちは任せた。そのまま俺は別行動だから待たなくていいよ。じゃ」
言うなり、答えも待たずエイジは駆け出した。



三体の隠れているのとは逆方向、かなり離れた距離に敵はいる。
エイジは、それに向かって駆けていた。
腕利きのスナイパーか、もしくは高みの見物を決め込むつもりの指揮官か。
これだけの距離を届く魔法はそうそうない為、そのどちらかに状況を限定する。
わざわざ三体と逆の方向に潜んでいるのだから、見つかるのは想定外ということだろう。
向こうからエイジが走るのが丸見えだとしても、これはチャンスだ。
どちらにせよ相手は想定外の戦闘に応じなければならなくなる。

茂みの前で、エイジは足を止めた。
殺気まみれ視線を感じたのは、この辺りから。
しかし、この茂みの中からではオオガキ達の戦闘が見えない。ゆえに、
「上か」
小声で呟き、エイジは武器を広げた。
両の手の指から伸びる十本のワイヤーは、他の枝に絡まりもせずに一本の木を取り囲む。
(狙撃にしろ観察にしろ、ここの上がベスト…何故攻撃してこないのかは気になるが…)
そんなこと、殺してしまえば関係ない。
エイジが腕を握りしめ胸の前でクロスさせると、木は一瞬にして、みじん切りにされた野菜のように崩れ落ちた。
細切れの木々は他の枝や葉に引っかかり、少しの束だけが音もたてずに地に落ちた。
そして、エイジの上空から血が降り注いでくる。

あまりにもあっけなく、この世界での初戦が終わった。



オオガキ、アークズの前に現れたのは、二つの巨体だった。
狼男と形容するのが近いだろうか、人間のような立ち振る舞いで歩いているが、その肉体は紛れもなく獣だ。
頭は完全にオオカミのそれであり、髪の毛らしきものがそこから垂れ下がっている。
ジャイアントであるアークズと並ぶほどの巨体。
その両手両足から伸びる爪は長く太く、人の身体など簡単に引き割けるだろう。
敵は二体。髪の色が青と赤の二体だ。
それ以外に特に違いは見つけられなかったので、アークズは自分の獲物を近くにいた方に決めた。
「俺が赤いのをやる。青いのは任せた」
「あいよ」
オオガキも自分の近くにいた方をやるつもりだったのか、必然的に狙いが別れ、ーー戦闘が開始した。



アークズと赤髪の獣が対峙する。
「お前の目…気に入った」
いきなり聞こえて来た人語は明らかに獣の口から発せられたもので、アークズは驚いた。
「…人語が理解できるのか。下級魔族かと思っていたが…思い改めよう」
アークズが油断を振り払い、殺気を漲らせた。
「いい殺気だ…。貴様のような猛者と闘えること、光栄である」
魔族らしからぬ正々堂々とした物言いに、アークズはまたも驚かされる。
「あんたみたいな武士道精神溢れる魔族もいるもんなんだな。だからといって手加減はしないが…。いや、んなことは求めてないか」
「その通り。全力での死合を…。いざ」
「尋常に勝負!ってなぁ!」
ジャイアントと獣が同時に駆ける。
そしてコンマ数秒後に、激突。
するかに思われたが、アークズは獣の爪を躱し、
「実力は大したことなさそうだなぁ!」
懐へと潜り込み、脇腹へ拳を叩き込んだ。
獣はジャイアントの拳をモロに受けて、数メートル後ろへ飛ばされ、着地も少し地面を滑った後に静止した。
「手応えあり…あっけないもんだ」



アークズが赤髪の獣と対峙する中、そこから数メートルの間をおいて、オオガキと青髪の獣は向き合っていた。
こちらは、赤髪のとは違い、何も言わずにーー、
「ッ…とぉ」
オオガキへと、突進攻撃を仕掛けてきた。
それを、後ろに飛ぶことによって躱す。
オオガキはバランスを崩さず着地し、そのまま地を蹴り、隙の出来た相手へ片手剣の斬撃を叩き込む…!
しかしその剣は、獣の爪によって弾かれた。
オオガキの片手剣、『グラディウス』は、市販品の片手武器の中では上位の攻撃力を誇っている。
重さも斬れ味も相当な業物。それが弾かれたとなると…、
(厄介な爪だぜ…)
本当に厄介だ。
片手剣と打ちあえるほどの爪、身体に受ければ大ダメージになるだろう。
それが相手の両手両足にあるのだ、出来れば近距離では戦いたくない。
しかし、オオガキは遠距離での決定打を持っていない。
リーチの長い両手剣は持ってきてこそいるが、素早い相手とのタイマン勝負には向かない。
(仕方ねー)
オオガキは覚悟を決めて、グラディウスを構える。今まで持っていた一本に加え、腰にさしたままだったもう一本も手に取り、二刀流として相手を迎え撃つ構えをとる。
(集中しろ…)
オオガキは、己に言い聞かせた。
決して勝てない相手ではない。
集中し敵の動きを見て、躱し、斬る。
それだけだ。それだけでいい。
(他に何も考えるな。目の前の敵だけを見ろ)
意識が研ぎ澄まされ、自分と相手以外のモノがオオガキの視界から消えて行く。
見つめる視線の先、獣は再び動き出した。



バンッと、地面の弾けるような音とともに、あかかの獣は飛び起きた。
「…モロに脇腹に入ったはずだけどな…どういうこった」
アークズがさっきの手応えを思い、起き上がれたことに疑問を抱く。
「私に…」
私、という一人称は見た目と真逆な気がするが、言葉は獣のものだった。
「…打撃は通用しない」
「へえ…」
打撃は通用しない、という獣の言葉に、アークズはニヤリとほくそ笑んだ。
打撃は、彼一番の戦闘法だ。
クロー型のナックルも持っているし、それを使えば斬撃も可能である。
しかし、獣の言葉がアークズにその気をなくさせた。
「それだけの自信…テメーを打撃で倒せれば、他の奴にも打撃は通じるってことだよなあ」
「然り。しかし私は、倒れない」
「上等ォ!」
アークズが疾走する。

獣の名は、ライカンスロープ。
エリンにおいて滅多に見ることはないモンスターで、打撃はほぼ無力化される体質、もはや能力と言い換えてもいいだろう。

それに対しアークズは、打撃のみでの戦闘を心に決めた。
(やはり隙がでかい…懐にはいるの容易すぎるぜ…)
再び獣を射程内に捉えたアークズは、渾身の連打を、
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
叩き込んだ。
しかし、
「無駄…、無駄だ」
今度は吹き飛ばずに堪えた獣の、反撃の爪を食らうことになる。
「ッ…!」
頭部狙いで振り下ろされた爪を、頭をそらして何とか回避する。
が、真上から降ろされた爪は、頭で躱したところで身体へと直撃することとなった。

腰を捻って回避しようとするが、間に合わないーー!

次の瞬間、ギャリィィィッと、金属同士のこすれるような音が響く。
「鎧、か」
赤髪のライカンスロープが呟く。
アークズの水色のローブを引き裂くと、中から現れたのは漆黒の鎧であった。
「…くっそー。一体目から手の内を晒しちまうとは」
これから何度の戦闘があるかわからない中、自分の手の内は少しでも隠しておいた方がいい。
だから鎧はローブで隠していたし、今も『ただの』打撃技しか使っていない。
離れた位置に敵がいた、という事実がある以上、敵も馬鹿ではないということだ。
それをエイジが倒したとしても、他にどこから見られているかわからない。
手の内はなるべく晒したくないのだ。
しかし効かない。ただの打撃では倒せない。
「刀剣は持たぬか」
ライカンスロープが言う。
「それじゃあ勝ったことにならねーだろうよ、相手の得意分野でぶちのめしてこそ、勝利の酒が美味いんだぜ」
ジャイアントは戦闘種族だ。
ただの勝ちで、アークズのことを満たすことはできないのだろう。
アークズは再びナックルを構えて、相手に問いを投げた。
「お前、一番硬いのはどこだ」
獣は問いの意図を理解したのか、トントンと、自らの腹筋を叩いて言った。
「砕けぬよ」
「いいや、砕くぜ。宣言する、テメーはそこをぶち抜いて倒す!」
獣の腹筋を指してアークズは宣言した。



オオガキは、青髪のライカンスロープと斬り合っていた。
いや、斬り合うという表現は正しくない。
斬られているのは、ライカンスロープの方だけだ。
オオガキは赤いローブを翻しながら相手の攻撃を躱し、隙を的確に突いて相手の傷を増やして行く。
獣は腕、脚、頭も使い攻撃を試みるが、全てオオガキに躱され、躱される度に傷を負っていた。
決め手になるような大きなダメージはない、しかし、斬られた部分から血液が流れ出て、このまま行けば倒れるのは獣の方だろう。

(勝てる…でも油断はするなよ俺…相手の関節の稼働域を考えろ…)
オオガキは思いつつも、相手の手脚を観察し攻撃を躱す。
オオガキがダメージを受けていない理由は、この戦い方にあった。
相手の手脚の長さ、そして身体の構造上動けない角度。
それを把握し、相手の射程内へと踏み込む。
射程内といっても、相手の行動が限られる位置に、である。
行動がある程度限られていれば、いくら相手が速くても回避するのは容易い。
しかしこの方法だと、相手が両手両足を使い迎撃できる懐までは入り込めない故に、決定打に欠ける。
が、それは些細なこと。決定打などなくても、こちらが倒れすらしなければ相手は失血死するのだから。
更にオオガキに有利なことに、ライカンスロープは、ジャイアントであるアークズと同じような体長だ。
(この数週間の組手の賜物だな…)
それを差し引いても、オオガキは自分の集中力と動きに感心していた。
(これなら…勝てる…!)

次の瞬間、ライカンスロープの右腕が、オオガキの顔目掛けて横殴りで迫ってきた。
(ここは一歩引いて腕を切りつけ…ッ!?)
突如、オオガキの視界が赤く染まる。
ライカンスロープの振られた腕から勢いよく出た血が、オオガキの目にかかったのだ。
組み手ではあり得ない、実戦ならではの応用。
オオガキは予想すらできず、思い切り直撃した。
「くっ…そッ」
突然の出来事に、思わず反撃も忘れて飛び退く。
それによって相手の爪は回避できたが、この好機を見逃すような甘い敵ではない。
ローブの袖でオオガキが目をこすると、赤くぼやけた視界が広がる。
そしてその中央には、突進してくる青髪の獣。
ぼやける視界で、突進から突き出された爪を弾く。
しかし右手左手と、相手は怒涛のラッシュを叩き込もうとしてくる。
それを何とか、薄目を開けて凌ぎながら、オオガキは賭けに出ることを決意する。



ぐるんぐるんと、アークズは右腕を回していた。
「どうした、かかってこないのかよ?」
回しながら言う。
ライカンスロープはそれを見るだけで、動こうとはせずに言った。
「一撃。入れさせてやろう」
「…なめてんのか?」
ナメている。誰がどう聞いてもそう思うだろう。
しかし、ライカンスロープの言葉は驕りから発せられたものではない。
彼にも、目的があった。
ライカンスロープが、ちらりと遠くの森を見る。
遠すぎて人の目では見えないような小さな点だが、そこには少女がいた。
こっちを見やり、合図を送っている。
『続行』の合図だ。
それを、見たライカンスロープは、更にアークズを煽った。
「貴様程度の拳では、何度やろうと…」
「いいぜ…わかった。黙ってな。死んでも文句いうなよ」
アークズも、そこまで言われて下がるわけには行かない。
正々堂々と勝負、とまで言った戦いで、言わせた相手にナメられたと思い、アークズは憤っていた。

アークズが射程内に歩きで入ってきても、ライカンスロープは動かない。
いつでも打って来いと言わんばかりに立っているだけだ。
「その自信に敬意を表してよォー、俺も本気のをぶち込んでやるぜ…」
アークズが構える。
そして思い切り踏み込み、全身の捻りを加えての右ストレートを放つ。

これならば耐えられる。ライカンスロープは放たれる拳を見ながら、確かにそう思った。
次の瞬間、アークズの拳に、一瞬だけ火が着いたような錯覚を覚える。
実際には錯覚ではなく、アークズはそういう戦闘方法を使うのだが、ライカンスロープにそれを確認する時間はもうなく。
アークズの拳は、獣の腹を貫いた。



青髪の獣の猛攻の中、オオガキは何とか、剣技を駆使して耐えていた。
視界は相変わらずぼやけている。
このまま行けば相手の失血による昏倒が先か、オオガキが致命傷を負うのが先かわからない。
(やっぱり実戦は訓練とは違ぇなあ…)
オオガキはそれを痛いほど実感していた。
実際の戦場は、安全策で勝てるほど甘くない。
ならば、
(賭けだぜ…お前の攻撃と…俺のファイナルヒット…どっちが速いか…)
本当はこんなところでは見せたくない技だったが、その甘い考え方が相手の目潰しを許してしまったのだ。
これ以上油断はしない。
だが、偵察しているであろう敵兵にも、技の全容は悟らせない。
一瞬だ。懐に入る一瞬だけ発動する。
オオガキは、相手の次の攻撃を思い切り弾いてから発動する、と考えたが、思いとどまった。
その方が相手の隙は大きくなり成功率は上がるだろう。
だが、これまでと違う動きをすれば、偵察兵も注意して次の行動を見るはずだ。
(いままで通りの弾き方で、わずかな隙を縫うしかないか)
三発目。それを弾いたら突撃する。
オオガキは覚悟を決め、まず来る一発目、相手が右手で斜めに振り下ろして来る爪を、左の剣で弾く。
そして二発目、左手で横薙ぎに払われる爪を、今度は下へと叩き落す。
(これは…チャンス…!)
この二発で相手は別方向へ腕を払われて、大きくバランスを崩した。
まだ予定の三発目ではないが、ここは、
(行くしかねー!)
オオガキが予定を早めて、ファイナルヒットを発動する。
一瞬。本当に一瞬でオオガキは地を蹴り、ライカンスロープの顔面目掛けて跳躍した。
そしてファイナルヒットは解除し、攻撃をーー、
「うぐッ」
膝蹴り。体制を大きく崩したライカンスロープは、転倒するのも構わずに脚をあげ、膝蹴りをしてきたのだ。
空中にいるオオガキはよけきれずに、それを腹で受けた。
だが…、
「浅い…ぜえええッ」
耐え、攻撃を開始する。
「目だ!耳だ!鼻!」
オオガキは叫びながら、倒れゆく獣の顔を、叫んだ通りの順に斬る。
そして倒れた相手が悶える暇も与えず、首へと剣を投げつけた後、自らも空中でバランスを失い、地に落ちた。
息切れしながら立ち上がり、相手の方を見やる。
これで生きていたりしたら、剣も一本投げたし大ピンチなのだが、流石の魔族これ以上動きはしなかった。
「ふう…得るものの多い戦いだった…」
オオガキは呼吸を整えて、久々の実戦の余韻にしばし身をおいた。



「よう」
アークズが、吹き飛んだ相手のもとに歩み寄り、横たわる獣の顔を覗き込む。
「…おいおいマジか、まだ生きてるのか」
獣は動きこそしないが、確かに呼吸をし、生きていた。
「内臓ぶっとんでんのに、どういうことだよ…」
アークズが驚きを通り越してその生命力に呆れていると、獣は口を開いた。
呼吸どころか、意識も健在らしい。
「我々…人間の分類ではライカンスロープと呼ぶらしいが…我々は頭、もしくは首を損傷させて脳の伝達を経たない限り、死にはせん」
見ての通り、ここまでされれば動けもせんがな、とライカンスロープは付け足した。
「私はもう動けん。とどめを刺せ、貴様の勝ちだ」
「…」
アークズはしばらく沈黙して、
「トドメを刺せっつった奴はよー、大抵の場合見逃されて生き延びるんだよなあー」
「…人間とはわからんものだ。人を真似し知性を得た私のような存在では、到底底が理解できぬ」
ライカンスロープの失笑をよそアークズは言う。
「だがタダで見逃してやるってワケじゃねーぜ、取引だ。まず一つ。お前戦闘中に俺の後ろをチラチラ見てやがったな。合図を送ってたのは誰だ」
ライカンスロープは、気づいていたのか、と意外に思いながら、
「言えんな。私はただの兵だ。仲間は売らぬ」
「仲間?仲間ねえ。お前捨て駒にされたんじゃあねーのか?」
「然り。しかし私の犠牲によって貴様の技は一つ漏れた。無駄ではない」
「…お前の知性は、仲間意識もねえ上の連中に捨て駒にされて死ぬためにあるのか?本当は正々堂々の勝負を望む奴じゃあねーのか?」
「正々堂々…か。それが出来れば本望。しかし私はただの無力な魔族だ…人間に利用されるだけの…無意味な知性だ…」
はぁー、と、アークズは大きくため息をついた。
そして自分の頭を、コンコン、と親指と人差し指で叩きながら言う。
「逆らうために知性を使え。お前の頭は、お前が思ってるより立派なモンだ」
アークズはそこまで言うと、尋問もやめてオオガキの方へと歩き出す。
後ろから声がする。
「取引は…どうした…」
「ただの操り人形に興味はねー。次はてめーの意思で、全力でかかってきな」
そして、それきり。
アークズは振り向きもせずに、戦闘中に離れた距離を広場の方へ歩き去る。

ライカンスロープは、今の自分の有様を見て、過去にも同じことがあったと思う。
「あの時は、全力で闘い敗れたな…」
残された獣は仰向きのまま、己の過去を思い出した。



「よう相棒、まだ生きてるか」
オオガキが自分の傷を処置していると、戦闘を終えたアークズが言いながら戻ってきた。
「相棒になった覚えはねーぞ、ピンピンしてっけどな」
アークズはオオガキの傷を見ながら、
「ま、双方とも大した負傷がなくて良かった。まだ一戦目だしなあ」
「…なあアークズ…必要ない戦闘は避けて、ボスだけ狙うって言ったの…誰だっけ…」
「……」
「……」
二人とも、しばらく沈黙した後、
「「は、ははは」」
同時に苦笑いをこぼした。
「ま、まあ戦闘となると抑えきれないのはジャイアントの性だからな、仕方ないだろう」
「ジャイアントの性っつーか…バトルマニアの性だなあ。俺も、敵を前にしたらすっかり忘れてたよ」
敵。という単語を改めて口に出して、オオガキは思い出す。
「あれ?敵は三体…それと別に遠くに一体…じゃなかったか?」
「ああ、途中襲いかかってきたら返り討ちにしようと思ってたんだが…未だに動いていないようだな、そこの、茂みから…」
アークズが言いながら茂みを指差した、次の瞬間。
茂みから飛び出す、敵の体は白く、背中に樽のようなものを背負っていて…、
「自爆特攻型かッ!」
一瞬にしてオオガキとアークズの至近距離へと飛び込んできた。
迎撃の拳などは関係ない。こいつは、敵もろともに自らを爆散させる気なのだから。
それを察知したアークズは、攻撃することをしなかった。
そして、モンスターは爆発した。
オオガキは、アークズの巨体の後ろにいたためモンスターの姿は見えなかったが、アークズの目の前で爆発したということはわかる。

青いローブが焼け焦げながら吹き飛ぶのを、オオガキは目の前で見た…。

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プロフィール

アークズ

Author:アークズ
マビノギ的な小説はじめました。
でもマビノギじゃないかもしれません。
永遠の厨二病。黒歴史量産中。

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