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マビノギ的な内容の小説を書いてるかもよ。 マビノギ知らない人も楽しめるように書きたいのかもよ。

stage2-7 ハイドアンドシーク

昨晩の敵、タスク・アライバルの襲撃から数時間後の正午、ティルコネイルには、二つの異変が起こっていた。

一つは、宿屋の大破だ。いくつかの部屋や廊下の壁には斬撃の跡がはしり、床の一部はどうやったのか、くり抜かれるように抜け落ちている。
この件に関わった、というより関わらされたオオガキは村長のダンカンに事情を話し、そこから様々な村人にも説明がいったので、とりあえず事件の二次被害で賠償金やらは払わずに、普通の日常に戻ることができた。

というのが、表向きの話だ。
「アイツは絶対にまた襲ってくるぜ…」
ティルコネイルの広場の外れ、人もまばらな階段に座りながら、オオガキ、ウェリアム、マリー、そしてスバルが話していた。
一連の事情はオオガキによって一同に説明されているが、なにせ襲われた当人にもわからないことが多すぎる。
何故襲われたのか、今はそこが重要だ。
「昨日のガーゴイル関係、だろうなあ」
オオガキが言う。
「でも兄貴達が討伐に行ったのって真夜中だよね?情報が伝わるのが早すぎるような…」
ウェリアムの疑問に、スバルが答えた。
「敵はこの近くで活動してるってことだろう、多分ガーゴイルと闘ってるところも見られてて、一人ずつになったところを襲ってきたんだろう」
「私の弓から逃げたあたり、多対一や遠距離への戦術はないみたいだし…固まって行動してれば心配はなさそうだけど…」
マリーの言うことは、確かに今のところは正しい。だが、
「敵が一人とは限らない…」
オオガキがぽつりと言うと、マリーも考え込むような顔になる。
「まあなんにしても、今はケイゴを探しに行くしかないよ。見つかれば何か手掛かりを掴んでるかもしれないし」
スバルが締めくくり、立ち上がる。
「見つかる…かな……」
マリーの不安気に呟いた一言は、ケイゴとの付き合いが長い他の三名の心に悲しく響いた。

そう、この村で起きた第二の異変とは、ケイゴの『消失』である。
村で起きたといっても彼と関わりのある者は多くないので、緊迫しているのはオオガキ達と村長その他数名であり、他の者からすれば他人事である。
それでも、他人事と思いながらも村人達は早朝からの捜索を手伝ってくれたし、数時間捜しても何も見つからなかったのだから、他人からすれば、どこか別の村へと歩いて行ったのか、安全なところで眠ってでもいるのかのどちらかだと思うのは仕方のないことである。
オオガキ達も朝から森へ乗り出し捜したが見つからず、争った形跡もなく、衣類の断片一つ落ちていないので、一旦ティルコネイルまで戻ってきたのだった。

そして彼ら四人は再び、手掛かりのない森へと乗り出そうとしていた。
が。
「なあがっきー、ちょっと失礼するよ」
後ろから聞こえるスバルの呼び掛けに、オオガキは振り返ろうとして、
「がっ」
悲鳴をあげる。
オオガキは、自分が悲鳴をあげていることにも気付かずに倒れ、気絶していた。
まだ座っていた女性陣二人が、ビクッとしながら引き気味に聞いてくる。
「す、すーさん…?」
ウェリアムがそれだけ言った。
スバルにもその短い言葉に込められた意味はわかる。
『お前は何をしているんだ』
と、こういうことだろう。
「森へはもう行かない。必要がない」
そう言ったスバルは手に微弱な雷の力を集め、ウェリアム目掛けて放つ。
「な…んで…」
「悪いがハッキリ言わせてもらうよ、足手まといなんだ、今のガッキーとウェリじゃ」
そんな言葉を聞きながら、ウェリアムは気を失った。

スバルは向きをかえ、一人残ったマリーに言う。
「君は皆とは昨日からの付き合いらしいね、ならもう帰った方がいい。多分、今起きてる事は厄介だ」
「で、でも……たしかに一晩しか付き合いはないけど…助けてくれたオオガキさんが困ってるなら、放って行くほど恩知らずじゃないわ!」
「そうか…」
スバルは呟き、手に魔力を練り始める。
「少し手荒になるけど…ま、ちょっとピリッとするだけだから許してくれよ」
言い終わると同時、手から雷の魔力を、マリー目掛けて放出する。



目の前に小さな雷の力、ライトニングボルトが迫ってくる。
どうにか防ごうと思う心とは別に、身体は固まって動かずに、そして魔法は直撃した。
ーーしかし。
何も感じない。ビリっとくる感覚もなければ、気を失う気配なんて全くない。
「……?」
スバルもマリーも何故かわからずポカンとしたが、スバルの行動は素早かった。
魔法でダメならば物理で気絶させる、と一直線に迫り、マリーの肩を掴もうとする。
マリーは迫ってくるスバルを見ながら感じていた。
(今度は…身体が動く…!)
マリーはスバルの腕をしゃがんで躱し、動きを止めずにそのまま、弓兵の基礎スキルにして数少ない近接技、〈ウインドミル〉の動きに移行、
「叩き込む…ッ」
言いながら回転させた身体はしかし空振りした。スバルがその動きを察知し飛び退いていたのだ。
マリーは慌てて飛び起きて距離をとり、腰の弓に手をかけようとするが、
「やめやめ、君の実力はわかったよ、来たいというなら一緒に行こう」
スバルが両手をヒラヒラとさせて戦闘終了を示したので、弓を取り出すのをやめて、ふーっ、と膝に手を当てため息を吐いた。



気絶したオオガキとウェリアムを宿屋に運び込んだ後、スバル、マリーはティルコネイルの北東の外れにいた。
「……どこ行くの?」
ここは捜索した場所とも、昨夜闘いのあった場所とも正反対だ。
「ケイゴさんを探す……ってわけじゃないみたいね」
言われたスバルは、ああ、と答えて、
「森なんか探してももう無駄だって悟ってね。だから、関わりのありそうな奴のところに行く」
「そんな人に心当たりが…?」
「本当に関わってるかは知らないけどね。この辺りでガーゴイルなんて物騒なものを飼ってそうなのは、アイツくらいだ」
「知り合い…?仲がいいって感じではないけど」
仲の良い知り合いに会いに行くのなら、足手まといだと二人を気絶させた訳がわからない。
「知り合い…ね、まあそんなとこだよ」
二人が話しながらも歩みを進め辿り着いたのは、キアダンジョンだった。

ティルコネイルの郊外に位置するこのダンジョンはゴブリン達が住み着き、そのゴブリンが弓や棍棒で侵入した人間を攻撃してくるため、それに対処できる実力者達しか近寄らない。
そんなダンジョンの祭壇に、二人は立った。

「じゃ、いくよ。戻るなら今だけど」
スバルが言って、ポケットから紙を取り出す。
「戻らないわよ。どうぞ入って」
「ですよね」
言いながらスバルが紙を床に落とすと、一瞬の視界の揺らぎの後、先程までと似て非なる空間に出た。

目の前にある石の女神像はかわらずに祈る形で置かれているが、先程までいたロビーにあったような、冒険者の声や足音は微塵もない。
一種の空間移動、これがダンジョンに入るということだ。

移動後のロビーの階段を降り、下のフロアへと向かう。
ダンジョンというのは基本的に廊下と部屋、そしてトラップで構成されており、進むための鍵を開くためにあえてトラップにかからねばならなかったりする。
「……普通のキアダンジョン……じゃないよねえ」
マリーが聞いてくる。
「そんな訳あるか。気をつけなよ、ここはもう奴の『家』の中だ」
「家…?ダンジョンに住んでるの?」
スバルはその問いに、うーん、と唸った後、
「敵もいないし、歩きながら話をしよう」
と前置きし、
「君はダンジョンが元々なんだったか知ってるかい?」
マリーに問う。
問われたマリーは、
「……元々って何よ、ダンジョンは最初からダンジョンじゃないの?」
「違うんだなー。少し難しい説明になるかもしれないけど頭パンクさせないで、周囲の気配には気を配りながら聞いてくれ」
スバルはただ歩くだけが面白くないのと、元々人にモノを教えるのが好きな事もあって、ダンジョンについて説明を始めた。
「簡単に言うと、ダンジョンってのは元々、戦争の時のための地下要塞だったんだ」
「地下要塞?」
「そう、人間と魔物が闘うと、どうしても体躯や数の差で人間達は不利になる。そこで狭い地下要塞、今で言うダンジョンにおびき寄せて数を減らして闘ったり、大きな敵の動きを制限して倒したりしていたんだ、けど」
スバルは一呼吸置いて、
「ある時、魔族軍はその軍のほとんどを地下要塞の攻略に使って攻め込んで来た。要塞の奥の方は市民の避難区域になったりもしていて、侵攻の後の光景は凄まじいモノだったとか」
「……」
マリーは何も言わずに話を聞いている。
周りの気配探索に意識を割いているのか、凄惨な話に言葉がないのか、恐らくは後者だろう。
「魔族の多くが地下要塞の侵攻に乗り出し、ほとんどがその内部に入った時、人間の味方をしていた女神モリアンは一大決心をしたんだ。その身を犠牲にして要塞に結界を張り、魔族達をそこに封じた。ダンジョン入り口の女神像はそのモリアンがモデルだね」
「へええ…それで魔族だらけになったのね…って、そこが家っていう奴は人間なの?」
「……人間だよ、一応……。」
スバルは苦笑しながら答えた。
「ダンジョンってのは、コインや食べ物、なんでもいいから祭壇に捧げる事で内部に入る事が出来る。でも、捧げるモノによって入り口がかわるんだ」
「あ…昔友達に聞いたかも……」
「へえ、物知りな友達がいるんだな。ま、これから会う奴は色んな物を捧げて研究して、俺にもよくわかんないけど自分用の入り口を作っちゃったみたい」
「な、なんか凄い人なのね……と、部屋、かな?」

二人は話しながら歩いているうちに、大きな部屋の前へと到着した。
内部を覗き見て、スバルが言う。
「妙だな……この前来た時はここに大量のトラップがあったんだけど…」
「ないなら無いでいいことじゃないの?」
マリーの疑問に対しスバルは、
「いや、何もないからこそ余計に怪しい。アイツはそんな単純に自分の領域に踏み込ませる奴じゃあない、知り合いといえどね」
「ふーん?でも、どっちみち進むしかないんじゃない?」
「ま、そうなんだけどな…武器は持っておけよ、警戒も怠るな」
言いながらスバルが部屋へと入って行くと、
「ようこそ、久しぶりだね、スバル」
奥から声と、足音が聞こえてきた。
コツ、コツ、という音は規則正しく鳴り響き、音と共に声の主が姿を表す。
「どうしたんだい、用があるんだろう、そんなところに止まってないで来なよ」
「……久しぶりだな…エイジ…。悪いがお前みたいな怪しい奴には簡単に近づかないぜ…」
エイジと呼ばれた少年は気を悪くするでもなく、無表情のままに、
「ふーん、そうかい」
言った。そして、
ヒュンッ!
「ーッッ!!」
何かがスバルの首元を掠める。反応していなければ直撃の位置。
「糸…?」
スバルが躱した首元を触って傷がないのを確かめながら呟く。
「そうだね、糸だよ」
無表情の青年が言って手を動かすと、カタカタカタ、という音と共に部屋の隅から何かが出てくる。
糸で繋がれたそれは、複数体の、操り人形<マリオネット>だった。
「じゃあ、ちょっとサクッと、実験台になってくれ」


~~~~~~~~~
ダンジョンの設定とかうろ覚えなんで間違ってるかも。
恐ろしいえーじさんのご登場です。おお怖い。
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アークズ

Author:アークズ
マビノギ的な小説はじめました。
でもマビノギじゃないかもしれません。
永遠の厨二病。黒歴史量産中。

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